「良かった。二人が幸せそうで」

何が父にとって良かったのか、全くもってよく分からなかったけれど、父は幸せそうだった。

「それにしても親子だね、白愛」

話を変えて私に話題を振る。何かと思えば母も私も“赤い人”を好きになったことだろう。

「それには触れないでよ、お父さん!」

「すまんすまん」

そう言って私たちは笑った。その時に見えた父の白い瞳は、とても美しかった。

そのまま父と紅斗くんは仲良くなったようで、二人でずっと喋っていたので、茶愛と二人で楽しくお話した。

「弟子にしてください!」

茶愛と二人で話していると、紅斗くんの大きな声が聞こえて、一般客も私も茶愛も揃って一斉に見る。

紅斗くんが手を出して頭を下げている姿を見て、なお意味が分からなくなったけれど、とりあえず話しかけてみた。

「何? どうしたの?」

すると父が私に向かって笑顔で「弟子入り志願」とだけ伝えた。簡潔にまとめすぎている。それだけだと意味がわからない。

「チョット何言ッテルカワカンナイ」

そんなこんなで話を聞くと、紅斗くんが父の姿に惚れ込んで弟子入り志願しただけだそうだ。

確かに父も紅斗くんと同じ“赤い人”ではあるけれど、何もそこまで志願するだろうか。

そんな不思議な気持ちで私と茶愛は顔を見合せた。やはり、男の人の気持ちは全く分からなかった。