9時のチャイムが聞こえる。

扉が開き、一組から順に入場する。

前が進むので私も歩を進めた。

体育館は広すぎて、驚いた。

保護者も大勢おり、拍手の音や歓声、我が子を呼ぶ声なので私は酔いそうになる。

君ノ宮先生の後を追いかける。

「この席から順に出席番号一番から座ってくれ」

「はい」

そうして一年生が全員座った頃、司会の人が入学式を始めた。

学園長の話、生徒会長の話、さほど興味は無いけれど一応聞いておいた。

「新入生代表挨拶」

司会の人の声で私は顔を上げる。

学年首席で入学した生徒が挨拶をするのだが、私は惜しくも二位で挨拶することが出来なかった。

そのため、新入生代表挨拶に選ばれた生徒が気になっていたのだ。

「えーっと。この度はこの学園に入学できたことを心から喜んでいます。これも受験時にボクたちを支えてくれたお父さんお母さんや先生たちのおかげだと思っています。今日からこの学園の生徒である自覚を忘れずに精一杯頑張りますのでご指導の程よろしくお願いいたします。新入生代表挨拶、一年一組、天寺(あまでら)紅斗(あかと)

その生徒は教室に向かう前、私とすれ違った男子生徒だった。

あんな見た目で、頭がいいとか、やっぱり人を見た目で判断するのは良くないのだと実感した。

天寺くんが席に座るのを眺め、司会の人がそれを確認すると、入学式は終わった。