真っ白な血

半分ぐらい見終わったあとに時間を見ると、紅斗くんが指定した時間が迫っていた。

「ごめん、時間だから行くね」

そう言い残して私は部屋から出た。ほんの少しだけ身だしなみを整えて。

その後ろ姿を眺める輝月が寂しそうな顔をしていたことを私は知らない。なぜなら扉を開けて閉める時に手を振ったが、輝月はいつも通りの笑顔で手を振り返してくれたからだ。

やはり私は周りの人の感情が読み取れないのか。もしくは周りが隠すのが得意なのか。どちらにせよ、私は己の非力さに絶望しかけた。

中庭に向かうと、ベンチで静かに座っている紅斗くんが見えた。なぜか咄嗟に隠れてしまい、影からひっそりと彼を眺めていた。

するとそこに知らない女子生徒が現れる。自分たちの部屋から覗いたのか知らないが、よく彼がここにいることを知っていたなと感じた。

何か会話をしていたけれど、よく聞き取れなかった。彼らは外に出ていて、私は室内。ガラス一枚分の壁がある。どうやっで聞き取ることは出来なかった。

口パクを読み取る能力がない限りは。

とは言っても、最近は、その能力を発揮する機会が少なかったためあやふやではあるけれど。

「俺は君のことが好きじゃない」

相変わらず冷たい瞳を女子生徒に向けながら彼は相手をフッていた。むしろいつも通りすぎて怖いぐらいある。

「は? 本当に一人の人を好きになったの? ありえないんだけど。ガチ? やっば!!」

そう言って何が楽しいのか分からなかったけれど、女子生徒は涙を流すほどに大笑いしていた。

「ありえない。その人に嫌われて振られてしまえばいい」

それだけを言い残して女子生徒は部屋に戻って行った。私はその場を立ち去ることしかできなかった。

後で言い訳をしておいた。

『間違えて寝落ちしちゃって! 本当にごめんね!』

そうすると彼は『大丈夫』というストンプを送ってきた。それだけだった。これはもしかしたら多大なるダメージを与えたのかもしれない。