真っ白な血

「白愛は……怪我してない?」

自分の心配よりも私の心配をしてくれる。その姿はやっぱり紳士で、優しかった。だから私は笑顔で答えた。

「……してないよ」

そうして右腕を後ろに隠した。彼には、まだ気が付かれてないと思い隠したけれど、バレていた。

「……血の匂いがする…………怪我してるでしょ?」

私は彼から目線を逸らした。

「それより、どうしたらその怪我は治るの!?」

「それよりって…………アンタの怪我の方が俺からしたら一大事なんだけど」

今思えば、この時、ほんの少しだけ紅斗くんはキレていたように感じた。

勢いよく紅斗くんは私の右腕を掴んできた。痛かったわけではない。むしろ優しかった。けれど、乱暴だったのには変わりはなかった。

「紅斗、くん……?」

この時、私は自分の怪我を見ていなかった。痛いと思ってはいたけれど、怪我をしていることは知らなかった。それよりも彼が刺されたことの方が気になっていたから。

「…………ねぇ血が白いなんて聞いてないけど……」

ヒュッ、と声にならない叫びをあげた。薄暗くなった空を見上げると、満月の光が私を見ているような気がした。

今日は満月──

私が一番恐れなければならない日。満月の日から少しの間だけ、私は自分が怪我をしないように気をつけなければならない。

なぜなら私の血が白くなるからだ。

「ねぇ…………! 白愛はもしかして……!!」

「それ以上は言っちゃダメだよ、紅斗くん」

私は優しく少しだけ諦めたように紅斗くんを見た。彼は少しだけ苦しい顔をして、聞いてきた。