扉が勢いよく開き、中から女子生徒が泣きながら走って行った。その姿を眺めながら、私はゆっくりと教室内に入った。
「白愛」
ゆっくりと小さく囁かれた声に私はヒイッと声にならない叫びをあげた。
「前も聞いてたよね?」
「イエ……ソンナコトハ、アリマセン」
冷や汗をかきながら必死に否定するが、紅斗くんにはバレていたようで。
「嘘つくんだ〜……へ〜……」
なぜかいつもの優しい声ではなく、少しだけ声が低くなる。それでも彼の声に変わりはなかった。
「紅斗くんは……好きな人がいるんだね……」
ずっと沈黙だったので勇気を振り絞って話を切り出す。
「……白愛は?」
「……え? 私?」
「そうだよ」
「……私は…………わから、ない……」
「え?」
いないと断言出来たら良かったのに、と心から思う。けれど残念ながら、私は自分の気持ちが理解できなかった。
彼にだけは、いるとも、いないとも言えなかった。
「……教えない! 紅斗くんの好きな人を教えてくれたら私に好きな人がいるかいないか教えてあげる!」
そうして私は急いで鞄を取り教室から出て走った。
「あっ!」
紅斗くんが必死に私を止めようとするけれど、途中で諦めてくれた。だから私は一目散に靴を履き替えて逃げたのだった。
「白愛」
ゆっくりと小さく囁かれた声に私はヒイッと声にならない叫びをあげた。
「前も聞いてたよね?」
「イエ……ソンナコトハ、アリマセン」
冷や汗をかきながら必死に否定するが、紅斗くんにはバレていたようで。
「嘘つくんだ〜……へ〜……」
なぜかいつもの優しい声ではなく、少しだけ声が低くなる。それでも彼の声に変わりはなかった。
「紅斗くんは……好きな人がいるんだね……」
ずっと沈黙だったので勇気を振り絞って話を切り出す。
「……白愛は?」
「……え? 私?」
「そうだよ」
「……私は…………わから、ない……」
「え?」
いないと断言出来たら良かったのに、と心から思う。けれど残念ながら、私は自分の気持ちが理解できなかった。
彼にだけは、いるとも、いないとも言えなかった。
「……教えない! 紅斗くんの好きな人を教えてくれたら私に好きな人がいるかいないか教えてあげる!」
そうして私は急いで鞄を取り教室から出て走った。
「あっ!」
紅斗くんが必死に私を止めようとするけれど、途中で諦めてくれた。だから私は一目散に靴を履き替えて逃げたのだった。