紅斗がオレにライバル心を抱いている。そのことに気がついたオレは、とことん白愛を利用した。

転校初日。紅斗と同じクラスになれた喜びと、彼の弱い所を見つけたい欲があった。教室内に入れば、すぐ様に紅斗を見つけた。けれど、彼は全くオレに気がついていなかった。

なぜなら彼はずっと前の席にいる女子生徒を眺めていたからだ。愛しい瞳は今までオレが見たことない瞳だった。この時に感じた気持ちは嫉妬だったのだと思う。

自己紹介後に白愛に告白まがいなことをしたのも、白愛に付きまとうのも、電話で白愛に告白したのも、現在進行形で白愛にアタックしているのも、紅斗の気を引くためだ。

醜いなんて分かりきっていた。産まれた時からの仲なのに急に疎遠になったのが悪い。遊びに行ったのに。なんども呼び鈴を鳴らしたのに応答してくれなかったのは、紅斗だ。

幼少期の小さな憎しみを今ここで爆発させたかった。紅斗が白愛のことを好きなんて分かりやすかった。一緒に色々な女子を誑かして遊んだ時だって、あんなに必死で愛しい瞳をしたことはなかった。

白愛には悪いことをしたと思っている。罪悪感がないと言われれば嘘になるけれど、謝る気もなかった。

あの紅斗を本気にさせたのだ。どんな人なのか見極めたいと思った。

「白愛ちゃんはオレがもらうね」

ある日の放課後、一人で帰っていた後ろ姿の紅斗に話しかける。彼は立ち止まり振り向いた。

「……は?」

相変わらず冷たい目をする。ハイライトのない赤い瞳は冷たく不気味で恐ろしい。そんな瞳がオレは好きだった。だから、あんな優しい瞳をする紅斗はオレが知ってる紅斗じゃない。

「紅斗は白愛ちゃんに騙されてるんだよ。紅斗は好きな人なんて作らずにオレとずっと遊んでくれるだろ?」

その時のオレは不気味に笑っていたのだろう。あまり表情を示さない紅斗の表情が少しだけ引きつっていた。

「白愛は俺のだ。テメェのじゃねぇから引っ込んでろ」

望んだものを手に入れる姿は昔のままだけれど、どこか違うようにも感じた。

「白愛ちゃんがオレを選ぶか紅斗を選ぶかなんてわからないんだから、そんなこと言っちゃダメじゃん。白愛ちゃんの気持ちも尊重してあげなよ」

そういうと彼は舌打ちをして前を向き歩き始めた。

「テメェのそういうところ大っ嫌いだ」

「……知ってる!」

また昔みたいに一緒に帰る。方向は一緒だ。オレたちが暮らしている街は誰にも知られてはならない。特に“人間”には──