真っ白な血

「紅斗くん!」

とりあえず彼が心配で叫んでみる。彼はいつも通りの笑顔で私に言った。

「怪我してない!?」

「え。私は怪我してないよ! けど紅斗くんが……」

「ボクはなんともないよ! それより白愛がなんともなくて良かった〜」

そう言って彼は頭を下げて地雷女子に何か耳打ちをした。聞こえなかったけれど、彼女は怖くなったようで逃げていった。

「紅斗くん! 紅斗くん!」

地雷女子が逃げ去ったあと私は急いで彼の元に駆け寄った。彼はゆっくり体を起こしている。

「白愛!」

ギュッ──

彼が私の名を呼ぶのを無視して、私は真っ先に彼に飛びついた。彼は硬直してしまったけれど、数秒後に手を私の後ろに回してくれた。

「怪我は!? どこもなんともない!?」

「も〜……さっきも言ったよ。ボクはなんともないから白愛が気にする必要は──」

彼が途中で話すのを辞めた理由は分かっていた。

「……ごめんね、心配かけて。はい、ハンカチ」

そう言って彼は私から手を離し、しゃがむ。

彼と私には10センチほどこそ身長差があって、彼がしゃがむと彼が上目遣いになる。その姿は貴重なはずなのに私は滲んでいて見えなかった。

彼はひたすらにハンカチを私の目元に当ててくれた。慰める言葉も何も無かった。大丈夫とか、ごめんねとか。だけどとても優しく涙を拭ってくれて、彼の左手はずっと私の右手を繋いでいてくれた。

「帰ろっか。歩ける?」

「うん……」