ある日のこと。毎年あるイベントが開催される日の朝。学校がないため、少し遅めに目が覚めた。

リビングに来ると、母が朝ごはんを用意していた。使用人が数名いるのに、料理だけは母がしている。掃除や洗濯は使用人がしているけれど。

「おはよう、お母さん」

「おはよう、白愛。今年も家族で行きましょうね」

そう言って満面の笑みな母。その姿が私には違和感でしかなかった。

どうしてそんなに、あの行事に積極的になれるんだろうか。私は真っ白から真っ赤になる花が嫌で嫌で仕方がなかった。

いつも通りに朝ごはんを食べ、部屋に戻り服を着替える。いつまでも部屋着のままではいられないからだ。

今日は何を着よう。毎年、真っ赤な上着を羽織っているけれど、今年はもう少しオシャレしたいなと感じていた。同じものばかりでは飽きるからだ。

タンスの中を探していると、赤いスカートが出てきた。裾には白いレースが着いている。家族は似合うと言ってくれた。けれどその時、すれ違った男子生徒に「ダサい」と言われて履けなくなった服だ。

リベンジする気はなかった。けれど、毎年ズボンで行くから今年はスカートにしたいと思った。欲に負けたのだ。

もしかしたらあの人とすれ違った時に「可愛い」と言ってくれるかもしれない。そんな欲が。