彼女を見たのは入学式。たまたまクラスの離れた中学の友達の所に向かう途中、廊下ですれ違った。

青い瞳が印象的だったのを覚えている。サラサラの白い髪。蛍光灯の光に反射してほんの少しだけ眩しく感じた。

名前を聞くと素直に答えてくれた。どこか田舎者みたいだなと感じたけれど、周りに聞いてみると違った。

結構な都会っ子だし、そこそこの金持ちだけど、あまり家から出ることが少ない子らしく友達が少ないと聞いた。

インドア派の陰キャ。けれど美しく、すれ違う男は二度見してしまう。

ここまで俺のタイプが美しい女だとは思わなかった。

今まで色んな女と付き合ってきたけれど、彼女だけは違うと思った。

その事を友達に話すと、友達は口を揃えて「一目惚れだろ」と答えた。

あぁそうなんだ、と気がついた時、なぜか嬉しくて彼女の隣にいたいと思った。

けれど彼女の隣には、いつも友達だと思われる子がいた。

茶髪に黄色い瞳。髪の長さは肩にかかる程度。ハーフアップをしている。

後で名前を聞くと傘黄輝月だと言った。

傘黄さんは彼女から離れることが少ない。俺はどうしても話しかけることが出来なくて迷った。

けれどある日チャンスが訪れた。

職員室前を通ると、彼女がいた。何をしているんだろうと早歩きで近づいてみると、教員に見つかってしまい彼女の手伝いをさせられた。

彼女の助けになるのは嬉しかったから断ることはなく受け入れた。

けれど問題はここからだった。彼女の教室までの間、喋るネタがなかった。

沈黙はまずいと思ってなにか聞こうとした時、思わず口から出たのは「なぁ。赤宮さんって彼氏とかいんの?」だ。

当たり前のように彼女は答えてくれたけれど、少し驚いていた。そりゃそうだよな。俺ですら驚いた。確かに気になるけれど、今じゃないだろ。もう少し仲良くなってからとか、他にもやりようがあっただろ。

反省していると、彼女の教室に到着した。何事もないように俺は教壇の上に置いた。彼女は少し驚いていて。けれどきちんとお礼を言ってくれた。

少し笑顔で。優しそうな表情を浮かべて。その姿が、もう眩しくて眩しくて写真撮ってホーム画面にしたかった。

恥ずかしさのあまり、教壇に置いたあと俺は逃げた。逃げれる立場じゃないのだけれども。それでも俺は耐えれずにその場を立ち去った。

その後、教室内で仕事をしていた彼女に出くわし、ほんの少しだけ警戒されていたけれども仲良くなることが出来て俺は舞い上がった。

これが面白いぐらいに舞い上がってしまい、家で踊り狂ったのを母に見られ引かれた。

最近では、連絡をしたりしていて、めっちゃ楽しい。基本は俺から話しかけるけれど、きちんと返信が来る。もう丁寧。マジで。どこのお嬢様?って思ってる。いや実際はお嬢様なんだよな。

もう好きって気持ちだけでこんなに幸せになれるなら、愛してるって気持ちはどこまで幸せなんだろう。考えても分からないけれど、幸せなことだけじゃないんだろうな。