真っ白な血

結局、私の仕事が終わるまで天寺くんは待ってくれていた。

あまり会話はなかったけれど、特に居心地が悪いとかなく、穏やかな空気が流れていた。

少しだけ心地よくて、このまま時が止まればいいのにと思ってしまった。

そんなこと一度も思ったことがなかったのに。

「終わったみたいだね。一緒に帰ろうよ」

「え、うん……そ、その前に、これを職員室に持って行ってもいいかな」

「うん。持つよ」

そう言って天寺くんは私の代わりに荷物を持ってくれた。

少し荷物を持たせてしまったことに罪悪感があるけれど、断ってしまうのも悪い気がして何も出来なかった。

「ありがとう、天寺くん」

とりあえずお礼を言って事なきを得る。

「気にしなくていいよ。ボクがしたくてしてることだから」

「それでも手伝ってくれるのは嬉しいよ」

「……そっか!」

なぜか天寺くんはとても嬉しそうな表情をした。

まるでこれ以上の幸せはないような表情。

子供っぽく嬉しそうに笑っているけれど、八重歯が見えているし、少しだけ意地悪。

けれど私はこれ以上の幸せそうな表情を見たことはないような気がした。