「いってぇな!!ちゃんとしっかり拭いとけよ!!」

ポリバケツが私に向かって蹴られる。
中に入ってた少しの水が見事に私の肩にかかる。

今日に限ってピンク色の服を着ていたのが悪かったのだろうか。
お気に入りのワンピースは一瞬でどす黒く染まった。


「おまえーいじめられっ子か?」

はじめて相手の顔を見ると、ひとつ上の学年の有名なワルだった。

「 磁 場 大 樹 」

誰もが知っている名前。
この前も先生を泣かせたらしい。

名前を呼べば誰もが黙るような存在。
そんな彼が私に話かけている。


「……」

怖くて怖くて、これ以上何をされるかわからなくて、歯がガタガタ言い出した。

「ふん。…いいから今日放課後、屋上に来い。わかったな。」

「…は…い……」


返事をするのがやっとだった。