杏音…杏音……私のかわいい…かわいい妹……。

そう思えるようになったのは、だいぶ最近の話。

昔から杏音はなんでもできる子で、
…私は全然そうじゃない平凡な子だった。


私が小学校にあがるぐらいに生まれた妹、杏音は、ものわかりもよくて、言葉も普通の子よりも飛躍的に早く覚えた。

だからそれは当然だったのかもしれない。
親の目は私からすぐに杏音に移った。

幼稚園に入るころにはもう友達をとりしきってリーダーみたいになってる。
遊びを決めるのもすべて杏音だったようだ。


小学校で勉強が少しずつ忙しくなりだした私を横目に杏音は毎日のように家に友達を呼んできて、晴も混ぜて遊んでいた。


ある日、それまで私のことを「お姉ちゃん」と読んでいた杏音は「理世ちゃん」と呼ぶようになった。

杏音にとって私は「お姉ちゃん」に見えないのだろうか…
絶望してしまった。

最後に自分に残されていた姉という肩書きだけの威厳すら除かれてしまった瞬間だった。