「杏音、またごはんたべないのかね。」

うどんをすすりながら、理世ちゃんがつぶやいた。

杏音ちゃんは今日も学校を休んで、自分の部屋にひきこもったままらしい。

…ついさっき、色恋沙汰で頬を染めたばかりの自分を、ちょっとうしろめたくなった。


「恋って大変だよね。」

そしてついつい、ため息のようにつぶやいてしまった。

しまった!!と思ったときはもう遅く、案の定、理世ちゃんはくらいついてきた。

「ちょっと待ったー!!今の発言、何!?」

「…。」

「さぁさぁ、お姉ちゃんに話してみなさい♪」

誘うような手つきをする理世ちゃん。もう言わなければどうにもならない気がして、全部暴露してしまった。

「へぇっ勇樹クンっていうんだぁ~♪苗字は?」

「なんでそこまで言わなきゃいけないの!?」

すべてを話してしまってヘロヘロになっている私に理世ちゃんはどこまでも追い討ちをかけてくる。


「いーじゃん!相性占いやったげるから。」

「うぅ…。磁場勇樹。」

「…磁場?」

その瞬間、理世ちゃんのさっきまでの明るいアホみたいなノリが急に止まった。


そして理世ちゃんは急に何かを考え込むようにうなだれて、どこかへ出かけてしまった。