「すぐるは詩を書くのが好きなの?」

昼休み、他の男子と混じれずに教室で一人でもくもくと詩を書いていた時、女の子がいきなり話しかけてきた。

「うん…。前の小学校とかで入選とかしてた。」

「…みていい?」

僕のノートをじっと真剣にみつめる女の子の名前は杏音ちゃんという子だ。

吸い込まれそうになるような大きな黒い瞳と、長い髪。服はいつも明るい色を着ていて、クラスのなかでも華やかな存在の子だ。

あまりにも杏音ちゃんが長く僕の詩を見つめているから、
なんだか裸をみられているような変な気持ちになって恥ずかしくなってしまった。

「バッタ…」

杏音ちゃんは僕の詩のタイトルをつぶやくと急に楽しそうにくるりと後ろを向いて、自分の机に戻って行ってしまった。

それはまるで、ひとひらの蝶だった。