…コンコン…

私の部屋のドアが鳴った。

「どうぞ」


また今日も、過去のことを思い出して頭をひっかきまわして苦しんでいたが、ようやく落ち着いたところだったので、ドアを開けた。

「杏音ちゃん、大丈夫なの??」

入口にケーキを持って立ってたのは晴だった。

「うん。なんとか。。。」


二人で晴の焼いたケーキを食べながら少しの間だけの沈黙。

「杏音ちゃん、」

「なに?」

「あのこと、覚えてる?」

「なんのこと?」

「誘拐事件…」


…カシャーン


思わず持っていたナイフを落としてしまった。
あまりに驚いたからだ。

だって、晴はあの時、まだ幼稚園。

…幼稚園生でも覚えてるものなのだろうか。