狂い咲きの蝶

「桜山さん、今日の学級総会の話なんだけど…」

“学級委員として”僕はさりげなく杏音に話しかけてみた。
しかし、杏音は机につっぷしたまま首を僅かに横に振るだけだった。

杏音を囲む数人の女子はただただ心配そうに休み時間の度に杏音を見守っていた。

その女子の目は僕をとらえても、
怒りだとか軽蔑だとか…そういう眼差しで見てこなかった。

杏音はどんな親友にも僕とのことを話していないらしかった。

内心“助かった”なんてまた思ってる自分が悲しかった。


杏音は号令もまともにかけられない状態だった。

今の状態じゃどうにもならないから僕が全部学級委員の仕事をこなしていた。



「相場君、ちょっと…」

「え?」

顔をあげると杏音の友達だ。

「杏音がね、もう学級委員はしばらく無理かもしれないから、アタシに代わってほしって…だから…」


……。

杏音は学級委員をしばらくはやらない、もしくはこのままやめるかもしれない。

そんなに僕がいやなのかな。

だけど、ここまでくると、はたして僕だけのせいなんだろうかと思ってしまう。


…責任を必死で他になすりつけようとする僕。

またひとつ、見たくない本当の自分の姿が見えた気がした。