詳しい話は道中聞くことになった。フィオンは寝巻き姿だし、何か武器になるようなものや遠出するための荷物は何もない。だが荷物を部屋に取りに戻る余裕は無さそうだった。
 話を聞くに、ここはメリンの言っていた妖精の通路のようだった。
 人間界ではフィオンが妖精を目視できないため、苦肉の策でバイオレットが小人に手伝ってもらい、フィオンを妖精の通路に入り込ませたのだった。
 妖精の通路ならば、妖精界では妖精の姿が見えるフィオンならば、その姿が見えるようになるだろうと考えたのだ。
 小人はバイオレットにまだ怒っていた。家主になにかあればわしらの住処がなくなる、もう二度とやらないぞと小声で喚いている。
 フィオンは小人を慰め、屋敷に戻ったら何かお礼をしようと話すと、小人は喜んだ様子だった。フィオンに対しての言葉は発しなかったけれど。
 やはり部屋に戻るともうこの通路には戻れなそうだなとフィオンは着替えや荷物を諦める。
 そのまま「出発するよ!」とバイオレットが小人のあごひげを引っ張りながら進み始めると、小人はまたわぁわぁと喚いた。
「わしは行かん!」
「お願い! 月の妖精の湖まででいいから!」
 ふたりのやりとりを聞いて、フィオンは「メリンがそこにいるのか?」と聞いた。
 どうにもこうにも、小人はここを離れるのが嫌らしい。しかしフィオンもバイオレットの説明を早く詳しく聞きたくて焦っている。バイオレットはバイオレットで早く先に進みたいのに上手くいかないことに苛立っていた。