光はフィオンの膝丈くらいの高さにある。その光が鷲鼻を照らしていて、そこに小人がいることにフィオンは初めて気がついた。
「なんた、どうした」
 小人がビクッとしてフィオンに光を向ける。それは小さな光る虫だった。
「なんだこの虫!」
 フィオンは光る虫を見て興奮する。
 バイオレットが冷静に「あたしたちの灯りになってくれる光虫だよ」と答えた。
 フィオンは状況がよくわからなかったが、バイオレットがいるということはメリンもいるに違いないと辺りを見回す。
 なんだか心が浮き足だった。
 久しぶりのメリンだ。早く顔が見たい。
 だが、他には妖精は見当たらないようだった。
「この小人のじいさんは人間に見られるのに慣れてないんだ。あんたの屋敷をいつも守ってくれてるよ」
 バイオレットが小人の周りを飛んだ。
「メリンが話していた小人か。いつもありがとう」
 フィオンはすんなりと話を受け入れ、小人に感謝の気持ちを伝えた。
 小人は隠れる場所をキョロキョロと探すが、なかったので諦めたようだ。三角帽子を深くかぶり、ぺこりと頭を下げた。そのまま小人は立ち去ろうとするが、「まだダメ!」とバイオレットに長いあごひげを引っ張られている。
「それで」
 バイオレットは自分よりも大きな小人との綱引きで息が上がっている。
「メリンが大変なんだ! 一緒に来て!」
「どういうことだ?」
 フィオンは訝しむ。
 メリンはまた何かに襲われているのだろうか。はたまた囚われているのか、もしくは病気か。人間の姿になった代償がその身に起こっているのだろうか。
 考えれば心配事は尽きなかった。フィオンの呪いをなんとかすると言って去っていったのだから。
 そんなフィオンに、バイオレットが瞳に涙を溜めて訴えた。
「あの子、また自分の命を差し出そうとしてる。次に命のかけらを渡したら、もうメリンは寿命がなくなっちゃうよ」