私はもう人間の姿では帰って来れないだろう。
 フィオンを助けるためなら、ずっとそばにいたい想いは胸に閉じ込めておける。訳などなかった。
 だって、寿命を半分差し出して手に入れた姿だ。
 悔しい気持ちと悲しい気持ちと、それでもフィオンを助けたい気持ちで心がぐちゃぐちゃだった。
 泣きながら妖精の通路から飛び出し自室へ入る。フィオンからもらったボタンだけを握り締め、バイオレットを探す。
「バイオレット、今すぐ妖精界へ行きたいの。一緒に行ってくれる?」
 声をかけながら探すと、窓際で遊んでいたようですぐに飛んできた。
「急にどうした。こてんぱんにフラれたわけ!?」
 バイオレットは涙でぐちゃぐちゃの私の顔を見て驚く。
「話は道中するわ。一刻も早くここから立ち去らないと、私の決心が鈍っちゃうからお願い」
 ネグリジェの袖で涙を拭いながら言うと、わかったというように私の頬にキスをするバイオレット。
 こんな優しいキスをしてくれるなんて、バイオレットには珍しいことだ。
「行こう」
 バイオレットは私の髪を引っ張りながら妖精の通路へと入っていった。
 妖精って、どうして人の髪の毛を引っ張るのかしら。私も妖精だけれど。