「なんだっ!?」
 その時フィオンが急に起きた。
「はぁ。なんだ、君か」
 むくりと起き上がるフィオンに「うなされていたわよ」と言うと、フィオンは汗を拭った。
「殺気を感じてな…」
 はぁ、とため息をつくフィオン。
 殺気って、もしかして、私が寝込みを襲おうとして失敗したことを言っているのだろうか?
「殺気って……ひどい!」
 正確には寝込みを襲おうとした私の方が酷いのだが、妖精からのキスがもらえるはずなのに殺気を感じて目を覚ますだなんて。なんと失礼なのだろうか。
 憤慨している私を見てフィオンは不思議そうに聞いた。
「それよりもなんでこんなところにいるんだ、こんな時間に」
 今日はガウンを羽織っているな、よしよし。と小さい声で一人で頷いている。
 薄着へのチェックが厳しすぎるわ。
「夜這いに来たのよ。キスさせてもらおうと思って」
 しらっと答えると、今度はフィオンが慌てた様子だった。
「よ、よ、夜這い!? そんなこと、年頃の女性がすることではないだろう!」
「年頃のってどう言うことよ」
「年頃とは年頃だ。若くて結婚前の女性のことだ。ましてや俺より年下の君が男性の部屋に潜り込むなど……」
 またフィオンの薄着チェックのような話が始まるのかと思ったが、私はそれを遮った。
「私はフィオンよりも、ずっとずっとずううううっとお姉さんよ!」
「だがそうだとしても男の部屋に夜に来ることは、人間は恥ずかしいと思うことなんだ!」
「人間は恥ずかしくても私は恥ずかしくないわ!」
 言い合いながらもフィオンの部屋から追い出されてしまった。
「今日は諦めるから! しっかり休んでね!」
 締め出されたドアの外からフィオンへ向かって小さく叫んだ。