隣を歩こうにも、先日のことが気がかりで落ち着かない。気になることは早く済ませてしまった方がいいことはわかっているから、勇気を出す。
「フィオン、この間は腕を触ったりして本当にごめんなさい。まだ怒っている?」
 フィオンは驚いた顔をした。
「いや、怒ってなどいないよ。気にしていたのか、すまなかった」
「私、人間の感覚がわからなくて嫌な思いをさせているんじゃないかって反省したの。突然押しかけたりして迷惑だったよね。ごめんね」
 私が謝ると、フィオンはまた驚いた顔をする。
「君もそんなことを気にするんだな。妖精は細かいことは気にしないのだと思っていた」
 それって、ちょっと失礼じゃない?
「人間ほど細かいことは気にしないけれど。むしろ人間は細かいことを気にしすぎだと思う」
 むすっとして言い返すと、フィオンは笑った。
 よかった、笑顔が見れて。
 嫌われてはいないみたいで安心する。
 けれど、フィオンの気持ちはしっかり確認しないといけない。
「私のこと、嫌いになっていない?」
 フィオンを覗き込むと、表情が固まった。
 あぁ、またやってしまったのかも。