「それにしても、俺に会いたくて人間の姿になるとは驚いた」
 私が妖精のメリンだと受け入れてくれたフィオンの態度は急変した。出会った時と同じ、とても優しいフィオンに戻った。それがとても嬉しい。
「さっきのフィオン、とっても怖かった」
 そう言うと、「すまなかった」と素直に謝ってくれた。
「妖精だから、どこから入ってきたなんて聞くのも野暮な話だったな」
 変なことを言うなと思ったけれど、たくさんおしゃべりしたい私は細かく説明をする。
「人間の姿になる魔法をかけてもらいに、月の妖精のところへ行ったの。月の妖精はすごい魔力を持っていて、このボタンを見てここまでの道を作ってくれたのよ。そこがフィオンの寝室だったの。驚かせたならごめんなさい」
「いや本当にびっくりしたよ。俺の寝室に女の子が倒れているものだから、何事かと思った」
 そしておもむろに自分の着ている上着を脱ぐと、私の肩にかけてくれた。
「?」
「女の子はそんな薄着でいてはいけないよ」
 そうかな? と思うけれど、今の私の体は妖精の時よりも大きい分魅力的な体だものね。ありがたく上着もそのまま受け取った。
 妖精よりも人間はよく気がきくのだな、とフィオンの優しさに心が温かくなる。