早くフィオンのところへ行きたい気持ちでいっぱいだけれど、人間の体になることへの注意点をもう少し聞いておきたい。
「なってみなくちゃわからないよ。今の君よりもなん倍も大きいんだから。はい覚悟して」
 きっぱりと言われてしまえば、もう質問はできなかった。
「わかりました、行きます」
 覚悟はもう旅立った時にしてきた。いつでも行ける。バイオレットにお礼とお別れを言わなければと考えていたけれど、ついて来てくれることになったからその心配もいらない。
 あとは私がフィオンのもとに行って、好きだと気持ちを伝え、キスをすればいいだけだ。ハッピーエンドはすぐそこだ。
「じゃぁ先に命のかけらをもらっておこうかな」
 月の妖精が私の頭の上で長い人差し指をくるくると回した。私は特に何も感じないまま、その動きを眺める。だんだんと頭の上に薄い紫色の結晶が出来上がって、騎士のボタンと同じくらいのコロンとした丸い玉が足元に転がった。月の妖精はそれを大事そうに摘み上げると、目の前で眺める。
「へぇ、エキザカムの妖精の結晶はまん丸なんだなぁ。君たちに似て可愛いね。新しい瓶を用意しなくちゃ」
 声のトーンから、嬉しさが滲み出ている。