バイオレットに握られた手を握り返す。
「でも私、人間になってフィオンに会いにいくよ。そう決めて来たんだよ」
 バイオレットを力強く見つめると、バイオレットはへたり込んだ。
「この、頑固もの……恋がなんだよ」
「ごめんね、バイオレット。今までたくさんありがとう。大好きだよ」
 私はバイオレットを力強く抱きしめた。本当に感謝しかないのだ。ずっと私の気持ちを聞き続けてきてくれたのは、バイオレットだけだから。
 そんな私たちを見て、月の妖精はにこにこしている。
「いいね。仲良しがいるって大事だよ」
「命のかけらで人間の姿になれるなら、なります」
 私は月の妖精の美しい顔を見据えて、そう答えた。
 そうして月の妖精は、私に人間の姿になる魔法の説明を始めた。
「じゃぁ説明するね。人間の姿を保てるのはせいぜい次の満月までだよ。ぼくの魔法だから、月の光を浴びれば魔力が回復するけど、浴びないままだと健康を損なう。そのまま人間の姿でいたいのなら、想い人からの口づけをもらうこと。それでこの魔法は完成する。でなければ魔法は解け、妖精の姿に戻るけど以後決して人間界へ行くことはできないよ」