お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜



「フィオン。妻が留守の間に知らない女性と抱き合っているだなんて、外聞が悪いですよ」

 メリンは努めて冷静に貴族夫人のように――貴族夫人なのではあるが、マナーレッスンを経てようやく身についてきたところだ――そう言うと、フィオンはきょとんとした。

(そんな可愛い顔をしたって騙されないんだから……!!)

 メリンは滅多に見れないフィオンの表情に弱いが、今は妻として負けてはいけないところだろう。
 夫が知らない女性と触れ合っていることを妻に見られたというのに、なんでもない事のようにしらばっくれるだなんて!

「実家に帰らせていただきます!」

 メリンの口から思わず出た言葉だった。

「そんな台詞どこで覚えたんだ!?」
「マリーに借りた小説です!!!」

 後ろから「メリン待って」と言うフィオンの声が聞こえたが、メリンはマリーを伴って入ってきたばかりの玄関を飛び出したのだった。