お願いだから、キスしてください!〜妖精だけど人間に恋をしています〜

「ただいま戻りました」
 メリンがマリーと共に玄関扉を開けると、そこには屋敷の主人であるフィオンと、彼にもたれかかる見知らぬ女性がいた。もたれかかっていると信じたいメリンだが、一見すると抱き合っているようにも見える。そんな屋敷の主人の姿を見てマリーは思わず「えっ」と小さく声を上げてしまった。

「おかえり」

 フィオンは焦る様子も見せずにメリンたちに声をかける。見知らぬ女性はメリンを見ると、キッと睨みつけた。

 
 フィオン……!その女の子はなんなの……!!!

 メリンは声にならず頭の中で呟く。ここで声を上げなかったのは年の功かしらとマリーの焦る気配を感じながら思うメリンだった。
 
いや、メリンは妻なのだ。自分には、夫にもたれかかる女の子について聞く権利がある。
 
 
「フィオン様、わたくし本日は帰らせていただきますね。またすぐにお会いしましょう」

 女性は上品なドレスの裾をひらりとさせながら「ごきげんよう」とツンと顔を上げてメリンとマリーに会釈して去っていった。


「歩いて帰るのかしら?」

 メリンの呟きに、マリーがブフッと吹き出す。笑っている場合ではないとわかっているのに、マリーはメリンのこうした呟きがツボに入ってしまえば我慢は難しい。