「おばあちゃま、妖精のお話をして!」
 子どもたちがメリンの周りにやってくる。
 メリンは喜んで子どもたちに妖精の話をし始める。
 妖精の話をしているメリンの周りはいつもキラキラと光が輝いて、時折花びらが舞い落ちてくる。まるで妖精が周りを飛び回っているかのように。
 実際にバイオレットや仲良しのトンボの羽の妖精が遊びに来ていて子どもたちが喜びそうないたずらをしているのだ。
 月の妖精の魔法が完成してからも、メリンは妖精の感覚を失わずにいる事ができた。バイオレットを認識し話すこともできた時はフィオンに抱きついて喜んだ。こんな事なら早くキスしておくのだったと、呪いを解く鍵が自分の力だったことを加えても何年経っても思い出しては悔しがるメリンなのだった。
 長生きはできないだろうと考えていたメリンだったが、月の妖精の見積もりが甘かったのか、月の妖精の時間感覚がメリンよりも長いのか、メリンはフィオンと共に年を重ねおばあさんと呼ばれる歳になったのだった。
 エキザカムの一族の長老はどんなに年を重ねても若々しい容姿だったが、人間の姿になったメリンは人間らしいおばあさんの姿だった。メリンはしわの数だけフィオンと共に過ごした思い出がたくさんあり、フィオンと同じ姿なのが嬉しく幸せだった。
 孫たちも、幸せそうに寄り添う祖父母の姿を見るのが大好きだった。
「ねぇ、おばあちゃまは妖精なの?」
 末の孫がくりくりとした目を大きく開いて聞いてくる。
 隣でメリンに寄り添っているフィオンが、「もちろん。だけどこれは家族だけの秘密なんだ」と人差し指を口元に寄せる。
「どうして?」
「おばあちゃまが妖精界に行ってしまったら、おじいちゃまが寂しいからよ」
 今度はメリンが笑って答えた。