人間、というか貴族が面倒なんだろうなと私は少ない人間界の知識の中で考えを巡らす。けれどそれよりも、そんな表情をするフィオンをそばで見ていられることが一番だ。
「それより、やっぱり妖精界にいる方がメリンにとっても良い環境だろうし、一緒に妖精界へ行こうかとも考えていたんだけど」
 急に何を言い出すかと思ったら、月の妖精のところでそんなことを考えていたのだそうだ。妖精界も楽しそうだし、なんて言っている。けれど自分の寿命を考えて欲しい。人間は短命なんだから。
「フィオンは大切な家族がこちらにいるんだから。私はフィオンに大切な家族がいるところで天寿を全うしてほしい。それに、騎士の仕事が好きでしょう?」
 妖精界にいけば人間はすぐ死んじゃうからダメ! という言葉を飲み込み、私の想いを伝える。フィオンも私の大切な家族を心配してくれたけれど、バイオレットもきっと会いに来てくれるし、なにより一番そばにいたいのはフィオンなのだ。でなければ命を削ってまでやってこない。
「私、フィオンの家族に会いたわ」
「じゃぁ早速会いに行こう」
 私の希望を聞いたフィオンは嬉しそうに答えた。
 そしてまた、優しくキスをしてくれた。