フィオンの指先に捕まっていた私は、扉を潜った途端に大きくなり人間の姿になった。フィオンの指先を握りしめたままだったけれど、フィオンは何も言わなかったからそのままでいる。
 フィオンに一緒に来てくれと言われたこと。また人間の姿になれたこと。フィオンの呪いが解けたこと。しかもそれがエキザカムの妖精である私自身の力で成し遂げられたこと――全てが嬉しくて、フィオンの指先を握りしめたままこの幸せを噛み締めていた。
 フィオンの部屋だ……と懐かしんでいると、フィオンが咳払いをする。
 抱きしめたいと言われたのを思い出し、お姉さんの私から抱きしめてあげなければとフィオンの顔を見上げると、赤面したフィオンが私から目を逸らした。こちらを見ていたのに。
「あー、その、なんだ。メリン、その妖精の服はとても刺激的すぎるから今すぐ羽織るものを持ってくる。そこを動かないで」
 フィオンは私の指先を離してクローゼットへと行ってしまった。抱きしめるのではなかったのかしら。