たとえメリンとフィオンが両想いになれたとしても、住む世界が違うのだ。メリンの人間の姿になる魔法の効力は、妖精界に戻ってしまったことで切れてしまっただろう。
 けれどフィオンもメリンにばかり負担をかけさせたくないと思っていた。呪いの心配が無くなった今、どちらの世界で暮らすとことになっても楽しそうだとさえ思えてきている。
 そうフィオンが発言しようとした時。
「ぼくの魔法は満月が出ている間はまだ有効だよ。今人間界へ戻れば人間の姿になれるよ」
 月の妖精は何でもないことのように言った。
「ほんとうに……?」
 メリンは目も口も大きく開いた。バイオレットが「マジか」と嬉しそうに声を上げた。
「命のかけらをもらってあるんだから、それくらいは面倒を見るよ」
 そんな上手い話があるだろうか。メリンは素直に聞いてバイオレットに怒られるのではないかとバイオレットを見る。バイオレットはただひたすらに嬉しそうににこにこしている。
 フィオンを見ると、「メリンの希望通りに」と言ってくれた。