「千夏、好き。」
先程までの子どもっぽい彼とは打って変わり、低く落ち甘い声。
「好きだ…。」
もう一度呟かれたその言葉は、少しだけ掠れていた。
私の体を包み込む彼の腕には、ギュッと力がこもる。
「…うん、私も。大好きだよ。」
まるで何かを確かめるように囁かれた愛の言葉に応えるため、私も彼をギュッと抱きしめた。
それからはお互い何も言わず、しばらく身体を寄せ合う。
チクタクと鳴る時計の針の音と、お互いの心拍音だけが部屋の中に響いていた。
私のとは全く違う筋張った身体、少しだけ高い体温。
彼の首筋から香るムスクの香り。
彼の全てが私を安心させる材料になる。
永遠に続いて欲しいと思うほどに幸せな時間。
それを遮ったのは、彼の不安そうな声だった。



