「きれい……」

 教わりながらガラスを吹いて、自分の好きな色をつける。
 私がやったのはそれくらい。準備も仕上げも工房の人にお願いした。
 だから自分で作ったと胸を張ることはできない。
 それでも、なんだかすごく特別に思える。
 キラキラと光るガラスのコップに気を取られていると、何かが、とん、と私にぶつかった。

「……?」

 なんだろうと思って隣を見れば、身体があたる距離にジークベルトがいた。
 彼もコップをよく見たかったんだろう。それにしても近い。
 そんなに見たいなら、しっかり見せた方がいいかな。
 自分の手を少しあげて彼の方に寄せ、ゆっくりと一回転させる。

「色は……。青、水色、黄色の3色かな?」
「はい。本当は黒か茶色も入れたかったのですが、水色や黄色とは合わせにくくて」
「黒か茶色?」
「ええ。黒は紺に近い青で代用できても、茶色はなかなか……」
「……そっか」

 ジークベルトが元の位置に戻り、身体が離れた。
 コップを眺め終わって満足したんだろう。
 見終わったから離れたのはわかるけど、ちょっと俯いて片手を額にあてている理由は謎だ。

「ジークベルト様?」
「なんでもないよ。……きれいにできてる」
「! ありがとうございます」

 お世辞も入ってるってわかってる。
 それでも、そう言ってもらえれば嬉しいんだ。