「それじゃあアイナ、またおいで」
「うん。また来るね」

 僕が選んだ3冊の本を持ち、ほっくほくの笑顔を見せるアイナが可愛らしい。
 もう少しあなたと一緒にいたいと寂しそうにして欲しい……なんて贅沢は、まだ言えない。
 また来ると、嬉しそうに言ってもらえるだけ幸せだ。
 一時期、避けられていると感じたことがあったから余計にそう思う。

「でも、もう少し意識されたいなあ……」

 アイナが乗る馬車を見送り、そうこぼした。
 今日も異性や婚約者として見てもらえている気がしなかった。
 でも、落ち込んでばかりじゃいられない。
 既に婚約はしているし、アイナに嫌われているわけでもないのだから、少しずつ前進していこう。