「唯穂ってさ、新村と喧嘩したの?」
「……えっ?」
文化祭で使うダンボールに絵の具で文字を塗っていた私は、そんな唐突な質問に、間抜けな声を出してしまった。
一緒に作業をしている女子数名は、こちらを見つめてくる。
いや、そんな哀れみを含んだかのような眼差しを向けないでいただきたい。
「け、喧嘩、っていうのかな……。うん。喧嘩。そうそう、喧嘩なんだよね。あれは」
「……唯穂、投げやりに答えないの。喧嘩っていうかね、実は、唯穂ってね、光瑠に……」
「何でもない。何でもないから。絶賛喧嘩中だから、気にしないでね」
那津花は絶対言おうとしてたので、どうにか口を手で塞いでやった。
告白された、なんて知られたくない。