愛おしき者

｢何をって…私と別れようって話でしょ？｣

(何を今更…)

内心、この男が言っていることが分からない…

｢だから…別れようと言われて、キミの反応はそれだけなのか？｣

男は、テーブルを見つめたまま、肩を震わせている

｢だって、あなたは私と別れたい…だから、私はそれを了承した…それだけじゃない…｣

私は、無意識のうちに小さな溜め息をもらした

男が言いたいことが分からない以上、この無意味な時間にも疲れてしまう…

｢キミは、別れを切り出されても、理由を聞き出そうともしないのか…？キミにとって、俺はいったいなんなんだ？｣

男は、瞳に涙を浮かべながら、私の顔を見つめる

(そういうことか…)

どうやら、私に別れを切り出して、私の反応を試したらしい…

私は、男に気づかれないように溜め息をついて言った

｢あなたは、私の彼氏だった人よ…ただそれだけだわ｣

私そう言って、財布からお金を取り出し、テーブルに置き…

｢さようなら｣

満面の笑みを浮かべて、喫茶店を後にした