すると、2分後、川村から連絡がきた。

「お疲れ。今、新名に連絡したわ。」

自分の心の中で、一瞬迷いが生じた。
「え?今?連絡取れたの?」

「おお。お前、さっき新名に連絡しなかった?」
なんでわかったんだと思いつつ、
「したよ。けど、連絡取れんかったから。」

「ああ、なるほど。ほんで、まあ、一応、新名に聞いたんだけど、
本は他の人から借りたらええやんってことやったわ。」

「そっか。しゃあないわな。わかった。」
頭の中には、まだ、なんで川村はすぐに連絡取れたんだってことが
離れない。そこで、思い切って川村に聞いてみた。

「お前、どこに連絡したん?」
「ん?実家やで。」

あれ、おれも電話したのに。たまたま、入れ違いだったのかな。電話が
切れた後、帰ってきたのだろうか。

「おれも、実家に連絡したんだけど。入れ違いだったんかな。」
「いや。家には居ったみたいやで。ほんでな、お前、もう新名には連絡せん方が
ええで。なんか、新名はお前と話したくないんだって。だからな。」

頭の中ですべてがつながった。彼女は家にいて、俺からの電話番号がディスプレイ
に写しだされたのを見て、鳴りやむのを待ってたんだ。

このとき、初めて彼女に嫌われていることに気がついた。
「おれって、みじめな男だな~。」

大学生活が始まる6日前だった。