私が旅の支度を済ませ、いよいよ明日は旅立ちの日。今夜は占い師の家で過ごす最後の夜である。
私は妙に感傷的になっていた。

占い師の家で生活していた日々を思い出す。小さな家だが私はゆっくりと家の中を見て回る。

一階の台所と食堂、自分は立ち入る事を許されなかった客間と占い師の部屋。この部屋に入ったのは占い師が亡くなってからだった。

二階は屋根裏件、自分の部屋。狭くて暗かったが、私が落ち着けるたった一つの場所だった。
暗いのは嫌で明るい場所が欲しいと、占い師に頼んだ事を思い出し苦笑めいた物が浮かんできた。

この場所から離れると思うと、名残惜しいから不思議なものだ。嫌で嫌でしかたがなかったのに・・・

その時私の耳にはドアをノックする音が響いた。

こんな時間に?

私は戸惑った。何故なら、占い師のいないこの家に訪ねてくる人間が、いるとは思えなかったのである。