子どもらしい理由のメッセージ内容に、思わず頬が緩む。

妃織ちゃんは俺に対しての警戒心がまったくなくて、本当に可愛らしい。退院のときに俺がプレゼントしたうさぎのぬいぐるみも、点滴通院中は毎日持って来て抱きしめていた。

なんでも簡単に手に入る時代で物を大切にする子が少ない中、妃織ちゃんは物をとても大切にする子なんだと感心し、それと同時に美優がそう教えたのだろうなと思うと、胸が熱くなったのを覚えている。


「すみません! お待たせしました」

「おまたせしました!!」


先日のことを思い出していると、支度を済ませた2人が俺の車に近づいてくるのが目に入った。
妃織ちゃんは、今日もうさぎのぬいぐるみを抱きしめている。

運転席を降りた俺は後部座席側に回ると、ドアを開けた。今日は、この日のためにチャイルドシートも購入済みだ。


「え……山内先生、これは……」

「妃織ちゃんを乗せるのに必要だろ?」

「そんな……! 私の車に乗せてあるのを移動させますから!」

「気にしないで。それに、この車に2つもチャイルドシートは必要ないから」


俺がそう言うと、美優は「そうですか……」と申し訳なさそうな表情をする。
それに対して妃織ちゃんは新しいピンク色のチャイルドシートに嬉しいようで、自分からすすんで乗ってくれている。