これは、発売早々売れ行きが好調な理由がわかる。
私は商品開発には携わっていないけれど、こんなに美味しいケーキを考案できるのは本当にすごい。

そして、そんな素晴らしい新作ケーキを月に1度賄いとして食べられるのが、私たちの特権。
というのも、お客様にどんな味か尋ねられたときのために試食しているようなものなのだけれど。


「よかったね。それよりさ、美優に尋ね人が来ているらしいよ」

「は? 私に?」


ケーキを咀嚼しながら、首をかしげる。
私に尋ね人なんて、保険会社かなにかの人かな? それならいつも実家に訪問してきていたけれど、留守だったのだろうか。


「うん。『休憩中です』って伝えたら『それじゃあ待ってる』って」

「名乗らなかったの?」

「うん。でも、イケメンだった」


イケメン? それだったら、保険会社じゃないか。
私が加入している保険会社に、そんなイケメンだと思える人はいなかったし。

そんなことを考えながらレアチーズケーキをコーヒーで流し込み「ごちそうさまでした」と両手を合わせた。これだけは、どうしても食べてしまいたい。


「まだ少し休憩時間残ってるし、ちょっと行ってみるね」

「1番奥の席をご案内したから、そこにいると思うよ」

「ありがとう」