『リハビリ』と聞いて、私も嬉しくなった。
やっと、やっと歩けるようになるんだ。今までベッド上での安静で退屈していたけれど、リハビリが始まったら少しは退屈しなくなるかな?

とはいえ、まだ無理は禁物。


「下肢筋力が低下しているので、まだ完全には歩くことはできないと思います。少しずつ進めていきましょうね」

「はい。ありがとうございます」

「その後、美優さんの傷の処置をしますから」


そう言われて、ドキリと心臓が飛び跳ねた。
だいぶ治癒してきたとはいえ、傷の処置は完全にトラウマになってしまった。あの初日の衝撃的な痛み……思い出すだけでも、全身身震いしてしまう程だ。

包帯も必要なくなり今はガーゼ保護だけだけれど、処置は苦手。


「美優さん?」

「……はい、わかりました」


俯いたまま、小さく返事をする。
妃織の方が大きな声で返事をしているのに、大人げないとも思いつつ、処置のことを想像すると声が小さくなってしまう。

「美優さんは相変わらずだ」と、山内先生はクスクス笑った。


山内先生が私の名前を下の名前で呼ぶようになったのは、手術後すぐのことだった。
「川崎さん」と呼ばれると、私も妃織も揃って返事をするからだ。看護師さんは「お母さん」と呼んでくれるのだけれど、山内先生は「美優さん」と呼んでくれている。