「……それでも、一生懸命小さな命を守った証ですね」


包帯の端っこをテープで止めていた際、ポロっと呟いてしまう。
……しまった。思っていたことを思わず口に出してしまった。それでも、今言ったことに嘘はないので聞かれても問題はない。

そう思ったのも、きっと彼女は自分を責めていると感じたから。
救急車を降りてきたときの彼女の表情は、不安と同時に後悔の気持ちも入り混じっている様に見えたのだ。ふらふらしながらストレッチャーに乗せられた妃織ちゃんを見つめる彼女の瞳を、俺は一生忘れられないと思う。

だからこそ、無意識に彼女を肯定する言葉を投げかけたのかもしれない。


「お母さんの行動は、決して間違っていませんよ」


笑顔で彼女にそう言うと、瞳から大粒の涙がこぼれ始めた。

転んだ際に汚れたのであろう、少し泥が付いたスカイブルーのワンピースに、次々に涙が落ちていく。洋服が汚れようが自分がケガをしようが妃織ちゃんのことを全力で守った彼女の姿は、俺には勇ましく映ったのだ。


「私……自分のせいで妃織がこんな風になったって……思ってて」

「それは違いますよ。今回はこんな風になってしまっただけ。お母さんの判断は、間違ってはいないですから」