「そろそろ時間ですので、行きましょうか」とプランナーさんから声がかかり、3人で控室を出るとチャペルへと足を運んだ。
晃洋さんはチャペル内で待機し、私はチャペルの外でスタンバイ予定。

妃織はリングガールという重要な役割を務めてくれ「保育園の生活発表会よりも緊張する!」と大騒ぎしていた。

チャペルの入口へ向かうと、父の姿が目に入る。
「お父さん」と声を掛けて横に並んだだけで、なんだか涙が出そうになってしまった。


「美優、きれいだな。妃織も……大きくなったんだな」

「お父さんとお母さんのおかげだよ。今まで私たちを支えてくれて本当にありがとう」

「んん……お前、式の前に泣かすな……」


白いハンカチで目頭を押さえつつ、父が言う。その姿が私の涙をそそり、必死になって涙を堪えた。
これからいっぱい泣く場面があるというのに、式の序盤で号泣するわけにはいかない。

それでも今日まで大切に育ててくれた父と母に対する思いが膨れ上がって、ポロリと1粒の涙がこぼれてしまった。


「では、時間ですので行きましょうか」


その言葉を合図に、チャペルのドアが開いた。
父の腕をしっかりと掴んで、ゆっくりと真っ白なヴァージンロードを進んで行く。