今もそんなやり取りを妃織としていると、背後からコンコンと控室のドアを叩く音が聞こえた。

「はい」と、担当プランナーさんがドアを開けると「おはようございます」と言う低い声が耳に入ってくる。
この声は、晃洋さんだ。


「あ、パパ! パパもかっこいいじゃん!」


晃洋さんに気付いた妃織は、嬉しそうに走って行く。
完全にドアが開き控室へ入って来た晃洋さんは、私を見るなり目を輝かせた。


「美優……きれいだ。世界一きれい」

「あ……ありがとうございます」


『世界一』という言葉を2人から言われて、少し恥ずかしくなってしまう。顔が熱くなった気がしたけれど、ベールで隠れていてよかったと思った。

ゆっくりと私に近づいて、優しくベールに触れる晃洋さんの大きな手。
私のことを『世界一きれい』と言ってくれた晃洋さんもグレーのタキシードに身を包んでいて、今日は一段とかっこよく見える。


「あ……晃洋さんも、かっこいいです」

「そう? そう言われると照れる」


セットされた髪に触れながら、晃洋さんが言う。
表情は照れくさそうにしていて、今まで見たことがない表情にちょっと嬉しくなる。

そんな私と晃洋さんのやり取りを傍で見ていた妃織が「もう、ラブラブねぇ」と茶化してきて、全員の笑い声が控室に広がった。