もう何度も見慣れているのに毎回毎回かっこいいと思ってしまうのは、それだけ晃洋さんに恋をしているから。
けれど、もう少しでそれも終わってしまうのかと思うと少し切なくもある。


「ほーら、妃織。支度しないと、水族館でイルカさん見れる時間なくなるぞ」


とりあえずトップスだけを着た妃織をひょいっと抱きかかえると、そのまま絵本が置いてある寝室へと連れて行ってくれた。

これは、晃洋さんなりの私への配慮。特になにか言われたわけではないけれど「美優も支度しておいで」ということ。
嫌々期に突入した妃織の相手をしているとなかなか支度が進まないことが増えて、晃洋さんが連れ出してくれるようになったのだ。

初めは妃織の「いや!」に戸惑っていた晃洋さんも、今はもう手慣れた様子。
晃洋さんに対してもぶつぶつ文句を言っているのは聞こえているが、私は支度を進めた。


「すみません、お待たせしました」

「あ、ママおそいー」

「ごめんごめん。ママの準備も終わったし、行こうか」

「イルカさんみれなくなるよ」


そう言いながら玄関に向かって靴を履いている妃織。
なかなかの自由人で、散々「いや」と言っておきながら、いざ出かけるとなるとこんな調子だ。