レントゲンを撮り終えて、再び整形外科の待合室で名前を呼ばれるのを待つ。その間妃織は持ってきた絵本を読んで、大人しく待ってくれている。

少し前までなら、こんな風に大人しく待っていることなんてなかったのに。
保育園に通い出してから協調性が芽生えたのか、精神面での成長を感じるようになった。それが嬉しくもあり、なんとなく寂しいような気もする。


「川崎妃織さん、おまたせしました」


そんなことを思っていると診察室から看護師さんに名前を呼ばれ、「はい!!」と元気よく返事をして歩き始めた妃織。

絵本をバッグに片付けつつ、妃織を追うようにして診察室へと入る。電子カルテの前には、白衣姿の晃洋さん……と、もう1人白衣を着た女医さんが座って妃織のレントゲン写真を確認していた。


「あっ! せんせい!!」

「やぁ。妃織ちゃん、よく来たね」


嬉しそうににこにこしている晃洋さんの横に座って、自分の膝に妃織を座らせる。

いつも晃洋さんのことをすぐそばで見ているクセに、白衣姿の晃洋さんを見てドキドキしてしまう。


「おや? お母さん、顔赤くないですか?」

「えっ? いや……大丈夫です」


私だけに聞こえるような小声で晃洋さんにそう言われ、誤魔化すかのように俯く。

なんと意地悪な……。
私が晃洋さんを見てドキドキしているのをわかっていて、からかったんだ。