「待ってて……いいですか？」

「もちろん。必ずここへ戻って来るから」


ぐっと私に顔を近づけて、ぴったりとおでこをくっつけた晃洋さんが言う。
その言葉に、私の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。

あぁ。私、晃洋さんを好きになってよかった。


「それからさ……俺が帰国したら、結婚しようか」

「へっ？」


さらに想像もしていなかったことを言われて、大きく目を見開いて晃洋さんを見た。
驚きで、涙が止まってしまう。


「結婚しよう、美優」


そんな言葉を、聞ける日が来るなんて思ってもいなかった。

男性不振になって1人で妃織を育てていくと決めていたばすなのに、その決意を簡単に壊してしまった晃洋さん。
丸ごと私を愛してくれて、いつも「守る」と言ってくれる。

そんな晃洋さんになら、妃織のことだって任せることができるんだ。


「美優、返事聞かせて」


再びくっついたおでこ。
止まっていたはずの涙がみるみるうちに溢れ出し、ぽろぽろとこぼれ落ちる。

返事なんて……もう一択しかない。


「……私と、妃織……晃洋さんと、同じ……苗字にしてください」


泣きすぎていて、途切れ途切れになる返事。
けれど、なにも言わずにぎゅっと私のことを抱きしめてから「よかった」と耳元で晃洋さんの声が聞こえた。