ちっちゃい柾哉さんを愛でる時間は5歳ぐらいまで順調に進んだ。
しかし、シリーズ6歳。そう、ランドセルを背負いはじめた頃に邪魔が入った。
「…どうしてあなたがここにいるのよ」
さも当然のようにこの家にやってきた元凶。そのセリフはそっくりそのまま返しますけどね!と内心であっかんベーをしていると彼女の後ろから、柾哉さんを数十年年を重ねた男性が姿を現した。彼がお父様だろう。
「おかえり、あなた」
それを証明するように由紀子さんが出迎えた。柾哉さんのお父様は短く返事をすると部屋の中を見渡して知らない人間がいることに気づいたらしい。そのことに気づいたのは私だけでなかったようだ。
「柾哉の彼女の果穂ちゃんよ」
「は、はじめまして、福原果穂です」
椅子から立ち上がり頭を下げる。しかし柾哉さんのお父様が口を開く前に芳佳さんが横槍を入れた。
「果穂ちゃん、あんな人放っておいて次小学生よ!どんどんいくわよ」
「え?えええ?」
芳佳さんは突然やってきた茅野さんと茅野さんを連れてきたお父様をフル無視してアルバムを捲った。先ほどと同じ容量で注釈付きで写真を見せてくれるけど彼らが気になって話が入ってこない。
「で。茅野はどうしているんだ。部外者はどう考えてもそっちだろう」
そして私の気持ちを代弁するように柾哉さんが呆れながらボールを返す。
その言葉に反応したのは茅野さんではなく、お父様だった。
「柾哉、お前はどうしてそんな失礼なことを」
「失礼なのは父さんだろう。人を呼びつけて、しかも果穂まで呼びつけておいて他の女を呼ぶとはどういう神経をしているのか疑いますね」
冷え冷えとした言葉を吐き捨てた柾哉さんはまだ入り口で突っ立ったままのお父様に怒りの表情を見せた。普通に考えて「あり得ない」と言いたいのだろう。柾哉さんが私と同じ感覚を持ってくれていてよかった、なんて内心ホッとする。
「柾哉、違うの。私が無理におじさまに言って」
「言った方も言った方ですが、連れてきた方も連れてきた方ですよ。いい年した大人が果穂を侮辱していると分からないんですか。いい加減にしないと、弁護士を通して然るべき処置を取りますよ」
柾哉さんの目が本気だった。「それはやりすぎでは?」なんて思うも相手は話の通じないお人。(お父様は分からないけど)手取り早くこちらにどれだけ迷惑をかけているのか分からせるためにも法的措置を取ることを告げたのだろう。
「柾哉、あなたおかしいわよ?どうして実の父親に」
「おかしいのはそっちだろう。だいたいなぜ茅野がうちの事情に口を挟む」
「病院の統合は私にも関係あるわよ!」
「正確には父さんと茅野の親父だろう?茅野自身興味があれば別に構わないが、俺は関係ないし興味もない」
「柾哉!」
「青山で会った時も先日もなんならずっと前から言ってるはずだ。俺は自分の医学の道を進む。実家は継がないし外科医にはならない、と」

