千秋先生は極甘彼氏。



 半日以上ぶりの食事を終え、リビングでまったりしていると柾哉さんの携帯に着信が入った。柾哉さんは一瞬顔を顰めたものの何かを諦めたように電話に出る。
 
 「はい」
 『あら、出てくれたのね。ひさしぶり、元気?』
 「ええ、まあ。お陰様で」
 『何その他人行儀は。それより柾哉、あなた厄介な女性に捕まってるの?』

 柾哉さんのぶすくれた声にハラハラしながら聞き耳を立てる。
 彼は私の様子に小さく笑うとこめかみにキスをして楽しげに返した。

 「ええ。とても可愛らしくて小悪魔な彼女ですよ。無自覚に僕を振り回すあたり、厄介といえばそうですけど」

 (ひ、ひどい!)

 その言種はないんじゃないですか?と唇を尖らせる。
 私の不服な様子が伝わったらしい。彼はよしよしと頭を撫でてくれた。

 『それにしては随分楽しそうね』
 「ええ。とても。彼女のおかげでとても幸せなんで」

 柾哉さんの声に表情に慈しみを感じる。そして電話の向こうから「やっぱりね」という声が聞こえた。

 『柾哉が選ぶ人なら私は何も言わないわ。ただあの人が目くじら立てているだけで』
 「ただただ面倒くさい」
 『そうなのよ。だからその小悪魔な彼女を一度連れて帰ってきなさいな。お母さんも会いたいわよ。芳佳も会ったんでしょ?』
 「…姉さんから聞いてたのならわざわざ聞かなくていいだろう?」

 柾哉さんの呆れた声に小さく笑う。家族と話している姿はとても子供っぽくて、少しだけつっけんどんな様子もただひたすら可愛い。

 『いいじゃない。柾哉の口から直接聞きたかったのよ。あと、早くしないと本当に“別れさせ屋”が動くかもしれないわよ?私の話も聞かないし』
 「今すぐ千秋の姓を捨ててもいいんだけどな」
 「(それはだめ!)」

 柾哉さんの面倒くさそうな呟きに思わず首を横に振った。

 「(福原柾哉より千秋柾哉の方がかっこいいから)」
 「ハハハ」
 『なによ、急に笑い出して』
 「いや、何も。まあ、とりあえず顔は出すよ。その代わり、姉さんもいる日で」

 味方は一人でも多い方がいいと柾哉さんは言う。
 しかし、話は早い方がいいから、ということで急きょ、翌日に彼の実家に行くことが決まった。