千秋先生は極甘彼氏。


 
 つまり、この話を時系列に沿って並べてみると。

 「…柾哉さんが茅野さんの連絡をブロックして、茅野さんが芳佳さんに連絡をして」
 「そうね。同時に茅野ちゃんが茅野ちゃんパパに連絡してパパ繋がりでその話を聞いたパパが柾哉にチクリと連絡したら柾哉が実家に乗り込んできたの」
 
 …ん?

 今聞きづてならない言葉を聞いた気がする。

 「…え?柾哉さん、が?」
 「そうなのよ。なんでも事後報告で我が道をいく柾哉が果穂ちゃんのことだけはちゃんとパパに面と向かって啖呵切ったのよね」
 
 さっきからドキドキが止まらない。私のせいで喧嘩をさせてしまっているのに、それでも嬉しくて今すぐぎゅうって抱きつきたくなる。

 「…きっと果穂は気にすると思ったんだ。それに果穂の家は想像以上に仲のいい家族だったし」
 「そうなんだ。それでもう結婚の話でもしてきたの?」
 
 ちょっとそれは早過ぎじゃない?と芳佳さんは私を見て言った。
 
 「こ、今後同棲する流れになるかもしれないので、その報告と。…ゆくゆくはそのつもりでいるって両親にちゃんと伝えてくれました」
 「え。まじ?あらぁ」

 芳佳さんが口元に手をあててニヨニヨしている。

 「え。果穂ちゃん柾哉で大丈夫?頑固だし、変にいじっぱりだし、医学ばかだし」
 「仕事に対する姿勢は尊敬しています!そ、それにすごく、優しい、です」
 
 カァと頬が熱くなる。でも目を逸らせたら負けだと思って必死に前を向いた。

 「まぁ100点満点の回答!ちなみにどうして果穂ちゃんは柾哉がいいの?聞いてもいい?ってかお姉様に聞かせて?」
 「姉さん」

 前のめりになる芳佳さんを柾哉さんが嗜める。
 しかし。

 「き、聞いてもドン引きしないでくださいね?」
 「もちろんよ!可愛い義妹の言葉なら喜んで!」

 売られた喧嘩?は買う主義だ。だからこそ私は柾哉さんへの愛を語ることにした。

 だって、柾哉さんが将来を考えてくれていると知ったもの。それなら私だって頑張りたい。どれだけ柾哉さんがかっこよくて可愛くて素敵で。私がどれだけ甘やかされて幸せな日々を送っているかを芳佳さんに心を込めて演説した。

 「えぇー。何そのむずキュン話❤︎弟がそんなに甘い人だったなんてねぇ?いつも仏頂面してるのに」
 
 柾哉さんとの出逢いから今に至るまでをざっくりと話した。時々チラッと柾哉さんを見たけれど、彼は地蔵のように固まっていた。福原家ではあれだけ色々話をしていたのに、あの饒舌はどこにいったのか。

 「…ま、柾哉さんはかっこよさと可愛さと愛おしさを兼ね揃えたスーパー彼氏なんです!お仕事している姿はかっこいいし、家でだらけている姿はキュンキュンするし、なんでも食べれますって顔してるのに椎茸が嫌いって、ちょっと拗ねちゃう姿とか、もう、もう、可愛いが渋滞してて、存在だけで尊…っぃ」

 (しまった!今心の声がダダ漏れたーーっ)

 「……なにこの子。私もほしい!柾哉、私も」
 「やるか!」
 「えーー?時々貸して?ね?」
 「果穂の心が汚れるからだめ」
 
 どうしてよ、ちょっとぐらいいいじゃない!と芳佳さんはプリプリしていたけど、その様子もどこか無邪気で子どもっぽい。そんなお姉さんに呆れながら適当にあしらっている彼を見ていると昔からこんな感じだったのかなぁ、と小さい頃の柾哉さんを想像して勝手に笑みが溢れる。