長野駅に到着してタクシーで15分ほど走った場所に実家がある。本当なら美味しい信州そばでも食べて向かいたかったけど、母がお昼ご飯を準備してくれているとのことなので断念した。
「ただいまぁ」
タクシーを降りて柾哉さんが精算してくれている間に玄関を開ける。中から「おかえり〜」と母の元気な声がした。
「はじめまして、千秋と申します」
「あらあらあら。ようこそおいでくださいました」
母は柾哉さんをみるなり驚いて目を丸くした。そしてすぐにとろりと表情を崩す。
「これ、よろしければ」
「もちろん、いただきますよ!」
「柾哉さんおすすめのお菓子なの」
「あら。じゃあ絶対美味しいわ」
母が来客用のスリッパを並べる。そして「どうぞ、上がってください」とよそゆきの声で先導した。
「(お母さん、楽しい人だね)」
「(よく言われる)」
「(果穂とちょっと似てる)」
え。どこが?と目を丸くすると「そういうとこ」と笑われた。わからん。
リビングに入るとどこか緊張した面持ちの父と目が合った。中肉中背、眼鏡をかけたどこにでもいるおじさんだ。普段着だけどヨレヨレのTシャツじゃなくて少しホッとした。
「はじめまして。果穂さんとお付き合いさせていただいてます。千秋柾哉です」
柾哉さんはカジュアルなライトブルーのジャケットに白の襟付きシャツ、ライトグレーのパンツを合わせていた。
かっちりとしたスーツは堅苦しすぎるのでこれぐらいカジュアルでいいんじゃない?と二人で決めたコーディネート。
それがめちゃくちゃ似合ってる。
すごくかっこいい。
わたしの彼氏がかっこよすぎてやばい…!
「果穂の父の幸彦です」
「母の朝子です」
「いつも娘がお世話になっております」
「こちらこそいつもお世話になっているんです」
両親と柾哉さんが楽しそうに話をしている。それだけでなんだか胸が熱くなって一緒に来てもらえてよかったな、と実感した。

